はじめに
手のジストニアは、指や手首の筋肉が自分の意思と関係なく動いてしまい、文字が書けない、楽器が弾けないなど日常や仕事に影響を及ぼす神経疾患です。
反復動作にともなって発症することが多く、職人や医師、音楽家など特定の職業で悩んでいる方も少なくありません。
ここでは、ジストニア患者であり研究者でもある筆者が、書痙(ライターズ・クランプ)、音楽家のジストニア、外科医のジストニアの症状と原因、そして日本で受けられる治療についてわかりやすく解説します。
手のジストニアとは?
手のジストニアは、局所的に筋肉が過剰に収縮するために意図しない姿勢や動きを起こす病気です。
特に字を書く、演奏する、手術するといった作業中に症状が顕著に出ることから、「動作特異性ジストニア」とも呼ばれます。
東京女子医科大学 脳神経外科 の解説では、書痙や音楽家のジストニアは反復動作が引き金となる局所性ジストニアであり、ボツリヌス毒素注射や内服薬が治療に用いられるものの効果は限定的で改善が難しいと説明されています(参考:東京女子医科大学 脳神経外科)。
書痙(ライターズ・クランプ)
書痙は、文字を書こうとすると指が勝手に曲がってペンを持てなくなったり、手首まで強張ってしまう病気です。
最初は細かい文字が書けない程度ですが、進行すると箸が持てない、スマートフォンが操作できないなど日常動作にも影響します。
治療としては安定剤や抗痙攣薬などの内服療法と、過剰に収縮している筋肉にボツリヌス毒素を注射する方法が行われます。
しかし日本では、局所性上肢ジストニアに対するボトックス治療は保険適用外であり、自費での施術が必要です(参考:日本ボツリヌス治療学会)。
音楽家のジストニア
楽器の演奏中に指が曲がったり震えたりして、思うように弾けなくなる症状を「音楽家のジストニア」と呼びます。
ギタリストやピアニスト、バイオリニストなど、繊細な指の動きを要求される演奏家に起こりやすい病気です。
演奏姿勢やフォームの改善、リハビリを通じた神経回路の再教育が重要ですが、症状が強い場合は書痙と同様にボツリヌス注射や抗不安薬を併用します(参考:国立精神・神経医療研究センター)。
外科医のジストニア
外科医や歯科医師など、長時間にわたって繊細な手術操作を続ける職業でもジストニアが報告されています。
手術器具を持つと手指が突っ張ってしまい、メスや鉗子が思うように扱えなくなるため、患者だけでなく医師自身のキャリアにも重大な影響を与えます。
日本では症例数が少なく研究も限られていますが、仕事の負荷を軽減しながらリハビリテーションや心理的サポートを組み合わせることが勧められています(参考:厚生労働省 難病情報センター)。
日本における治療法 – ボトックスと内服薬
1. 薬物療法(内服薬)
抗コリン薬やベンゾジアゼピン系薬剤が用いられ、筋肉の異常な緊張を抑えることを目指します。
ただし、長期使用による眠気や倦怠感など副作用があり、効果が不十分な例も多いと報告されています。
2. ボツリヌス毒素療法
過剰に収縮する筋肉にボツリヌス毒素を注射し、一時的に筋力を弱めることで症状を緩和します。
効果は数か月持続し、定期的な注射が必要です(参考:日本ボツリヌス治療学会)。
3. 外科治療・脳深部刺激療法(DBS)
薬物やボトックスで改善しない重症例では、脳深部刺激療法(DBS)や視床凝固術が検討されますが、手のジストニアでは対象患者が限られます(参考:東京女子医科大学 脳神経外科)。
まとめ:理解とサポートが回復への第一歩
手のジストニアは日常生活や仕事に大きな影響を与えますが、早期に適切な治療やリハビリを始めることで症状を抑えたり、悪化を防いだりすることができます。
日本では薬物療法とボツリヌス注射が主要な治療法であり、患者さん一人ひとりの症状に合わせて治療方針が選ばれます。
筆者は今後も国内外の最新研究や患者支援情報を発信し、同じ悩みを抱える方々の助けとなることを目指しています。

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